相続税 節税・納税対策
相続税は事前対策によって、節税することができる場合が少なくありません。節税対策の大きな柱となるのは、土地の評価額を下げることによる節税対策と暦年贈与(毎年少しづつ贈与する)による節税対策の2つです。
土地の節税
土地の評価額を下げることによる節税対策
道路に面していない、形状が複雑である、土地の一部が私道になっているなどの欠点があると、評価額は下がります。
土地 | 形状 | 評価法 |
---|---|---|
普通の土地 | 主要道路に面している・間口が広い・四角形 など | 路線価×面積 |
欠点のある土地 | 道路に面していない・形状が複雑・一部が私道 など | 路線価の設定申請(義務ではない) |
- 普通の土地は、「路線価×面積」で計算します
- 路線価のない土地は、税務署に路線価(特定路線価)の設定を申請できます
- 特定路線価は申請すると、必ずその特定路線価で評価します
- 特定路線価は、通常の路線価の7割から9割です
- 通常の路線価での不整形地補正の評価と特定路線価のどちらが有利か見極めます
被相続人が事業用・居住用に使っていた土地につき、相続時の評価額が減額される小規模宅地の特例を活用するなど、税理士の手腕によって土地の評価額は変わるのです。
贈与による納税・節税対策
1.暦年贈与による節税対策
生前贈与をうまく利用することで、確実に財産を移転でき、相続税を節税できる場合があります。贈与税は、課税されると相続税より税率が高くなるので、いかに非課税の範囲内で行うかが重要です。
贈与額 | 贈与税率 |
---|---|
600万円超 | 40% |
1,000万円超 | 45% |
1,500万円超 | 50% |
3,000万円超 | 55%(最高税率) |
贈与税率は、3,000万円を超えると、最高税率の55%になってしまいます。相続税を減らす目的で、一気に贈与を行うと、相続税以上の贈与税がかかってくることにご注意ください。
この時、《暦年課税(通常の贈与税)》か《相続時精算課税》のどちらかの方法を選択する必要があります。
2.暦年課税とは
贈与を受ける人(受贈者)が1月1日〜12月31日までの1年間で受け取った財産の合計金額が、基礎控除額の110万円を越えたケースに限り贈与税がかかります。
- 贈与を受ける対象者の制限がありません
- 必ず贈与が成立している証を残しましょう
- 現金贈与なら、銀行振り込みを利用します
- 不動産の贈与は高額となるので、共有持分を少しづつ贈与します
- 登記費用(登録免許税)や司法書士の手数料も費用対効果を考えておこないます
名義預金では、親が通帳・印鑑などを管理しているために、子供が自由に使える状態にないので、親の財産と見なされて、贈与が税務署に否認されることがあります。
暦年課税を利用する場合は、長い年月をかけてじっくり贈与し続けるのが基本です。しかし、金額が多い場合や、時間的な短縮をはかる場合には、贈与税の最低税率10%から、その上の15%の税率で贈与します。
3.贈与税の配偶者控除の利用
婚姻期間が20年以上の夫婦に限り、次の3つの要件を満たせば、夫婦の間での2,000万円までの贈与が非課税になります。但し、住むための不動産に限られます。基礎控除と一緒に使えるので、合計2,110万円の贈与が可能です。
- 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
- 自分が住むための国内の不動産を購入するために贈与が行われたこと
- 配偶者が住むための不動産に、贈与を受けた年の翌年3月15日まで、実際に住み、その後も住み続けること
4.相続時精算課税とは
相続時精算課税を選択する場合には、生前贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の間に、贈与税の申告書を提出する必要があります。この制度は、早期に多額の財産を贈与することが可能となり、また相続時の争いも防ぐことできます。
- 60歳以上の親か祖父母から20歳以上の子供か孫への贈与で選択できます
- 受け取った金額が通算で、2,500万円までなら贈与税はかかりません
- 2,500万円を超えると、一律20%の贈与税がかかります
しかし、相続時精算課税制度は、使い勝手の悪い制度でもあるので、次の点にご注意ください。
- 一度この制度を選択すると、「暦年課税」への変更ができなくなります
- 贈与額の大小に関わらず、贈与税の申告が必須となります
- 贈与税はかかりませんが、相続税が課税されます。この時、贈与時点の価額で相続税を計算し、これまでおさめた贈与税は精算されます
- 相続時に贈与された財産が無くなっていても相続税は課税されてしまいます
- 生前贈与を受けた土地、建物などは物納できません
相続・贈与は税のスペシャリストである税理士にご相談ください。